たぬきの読書

読んだ本の感想やら

終わった人 内館牧子

東大卒でメガバンクに就職。そんなエリート街道まっしぐらな男への突然の子会社出向命令。終わったと思いつつも職務を全うし、定年を迎えた。生き甲斐、居場所を求めさまよう彼に光はさすのか、、、

そんな話でした。

定年、老いは誰しもが迎えてしまう逃れられない問題ですねー

毎日働き詰めの今から考えると、楽しみでしょうがない定年後ですが、そうではない面も多々あることを思い知らされました。

趣味というのは忙しい時間の間を縫って工夫して精一杯取り組むのだから楽しいのであって、よほどの情熱がなければ毎日取り組めるものでもないのでしょうね。

今の私からするとあまり実感も湧かないですが、、、

今回の主人公は定年後の喪失感に満ちた退屈な生活の中になんとか新たな生き甲斐を探そうと、カルチャースクールに通ったり、ジムに通ったり、恋に走ったり、社長に就任したりしました。

社長になったことで水を得た魚のようにイキイキとしていましたが、それも結局倒産により続かず。

夫婦仲も険悪になり、最終的には合意のもと卒婚という形で別居することとなりました。

人生というのは先が分からないことだらけだなと感じた次第です。

エリート街道まっしぐらだったのに、出向

何事もなく夫婦で暮らしていたのに別居

十分な資産があったのにすっからかんへ

また本書では一人の男の人生に着目して話が進むわけですが、その中で

①夫婦関係

②故郷

の2点は特に照準があてられているように感じました。

確かに考えてみると、夫婦関係は一生背負っていくところがあるし、

故郷は間違いなく自分の基礎を形作っているように思います。

夫婦関係について、娘の道子が大変もっともなことをいっていて関心しました 「そりゃパパのやったことは悪いよ。一切、ママに責任はない。だから、方法は二つしかないってこと。別れるか、元に戻るか。考えてもみなって。ママは一人では食べていけないと思って結婚したんでしょ。どうせならいい暮らしができそうな、東大出のメガバンクの男をつかまえたわけでしょ。もしも、結婚した男が一生、ずっと健やかで豊かで、自分を幸せにしてくれると思っていたなら、ママはバカ。妻になれる器じゃない」 「二人ともさァ、利害があっても、チャペルで『健やかなる時も病める時も』って、神に誓ったわけでしょ。今がパパの病柄める時ってことだよ。ママ、カバ ーする気ないなら別れなって。九千万の負債ってだけで、誰もママのこと悪くいわないよ やっぱり夫婦になるということは、いい時だけを見るのでなく、むしろ最悪の事態になったときでも助け合って行けるのかどうか、その覚悟があるかどうかで判断しないと行けないと切に思いました。 第二のテーマの故郷についてもやっぱり自分にとっての理想郷があるとしたらやっぱり故郷になると思いますね。 小さい頃から過ごしているということで、やっぱり思い出と戦っても勝てないんでしょうね。 どうやっても幼い頃のような純粋な気持ちで物事を体験することはできなくなってくる。 だから、一番鮮烈で濃い体験の多く詰まった故郷。 勝手知ったるその故郷に戻りたくなるのかなと思います。私も定年後は故郷、または故郷の県には定住したいですなー それではまた。