ひなた弁当 山本甲士
今回読んだ本はこれです。
- 作者: 山本甲士
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2017/02/07
- メディア: 文庫
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山本甲士さんの「ひなた弁当」
表紙がもう面白そうですよね
この会社員の哀愁漂う背中
もう即買いでした。
恥ずかしながら、山本甲士さんの本を読んだのは初めてですがこの本で一気にファンになりました。
主人公の良郎の控えめな性格、人柄のよさにはとても好感が持てます。一度落ちるところまで落ちた人間が、野生?に目覚めていき、日を重ねるごとに活力に満ちていく様子は読者を興奮させます。
登場人物も色とりどりで、"人生"のあり方。生き方、強い人間とは何か、を考えさせられる1冊でした。
涙を誘うような感動的な話ってページをめくる手が止まらないですよね?
この本はそういう本ではないと思います。
だけれども、日々変化していく良郎自身、家族関係、人間関係を読みすすめていくにつれて、次はどんなことをするの?どんな人間ドラマがあるの?
とワクワクしてページをめくる手がの止まりませんでした。
私も良郎のような先入観、固定概念に惑わされない真の強い男になりたいです!
以下ネタバレ
あらすじ
主人公は中堅の住宅関連の会社「王崎ホーム」に勤める気が弱くて、成績もそこそこ、同僚には軽んじられ、家庭でも冴えない男扱いされている良郎。
会社でも仕事をそこそこにし、人間関係もそこそこ、出世なんかは出来ないだろうと諦めている、活力のない男。
会社の人員削減によってリストラにあってしまった良郎たち。
上司は裏切り、同僚もなんとかコネで再就職を果たすが良郎はなかなか仕事が見つからなかった。
スキルもなければ、風貌だって冴えない。くたびれた中年を雇ってくれるところはなく、再就職活動は門前払いの日々。家庭でも妻には強くあたられ、娘には無視される。アルバイトをやっても腰痛が原因で続かず、ただ外を徘徊する日々だった。
その日常を変えたのは公園に落ちてたドングリだった。
"これって食えるのかな?"
この疑問から良郎の生活はどんどん変化していく。
食べられる野草、木の実などを収穫し食べていた。
家族にそのことがバレると、
「食品会社の研修で」
と嘘をついた。
川で釣りをしていた人に釣りを教えてもらい、魚を調理するようにもなった。
そこで思いついたのが、自身の採集した食材を使った弁当屋だ。王崎ホーム時代にお世話になっていた弁当屋に頼み込み商売を開始する。
自然の中でどんどん自分らしさを発揮し、落ちるとこまで落ちたことで俗っぽい執着のなくなった良郎はこのときには会社にいたときとは別人になっている。
商売も機動に乗り、様々な人たちとの関係も変わってくる。
以前の良郎を知るものはみな一様に変化に驚き心の中では憧れのような気持ちを抱いていたように思う。
採集生活を始めてから出会った人たちも様々あり、相互に好影響を与えている関係である。
そういった人々のつながりもあり、弁当屋「いわくら」は順調に売上を伸ばし、
それだけでなく良郎自身に向けた仕事も入ってくるようになる
家庭でも、妻も駄目な夫としてではなく、パートナーとして接するようになる。口を利いてくれなかった妹も活力にみなぎる良郎に影響を受け、ある決断をする。
父にも頼るようになる。
活力に満ちた今の良郎は自分でもいい感じじゃないかと思うほどであった。。。
って感じの話。
めちゃくちゃ面白かったです。
良郎が自分と重なるとこあって感情移入しまくりでした。
リストラを機に採集したもので弁当屋やってそれで、男としても生まれ変わる。
こんな話読んだことないですよ笑
どんどん活力に溢れてくる良郎をみて自分もたくさん元気を貰いました。
次はどうなってくの?って感じで読んでいてめちゃくちゃ楽しかったです。
自分が特に楽しく読めたところは人間関係の変化の部分です。
会社でもなんだか冴えないやつと思われ、家庭でも駄目な父、夫扱いされていたのに、
日々に楽しみを見出してからの良郎はそうでなくなります。
大学時代の同じゼミにいた知人の堀江。
大企業に就職するも、転勤続きが原因で家庭はしっちゃかめっちゃか、仕事も頭を下げて、へつらって、、、
バッティングピッチャーをやらされてた不良の樋口。
好き勝手やってるってイメージだったが、なんだか影のある人になっていた。ヤクザをしている。自分の楽しいように生きているようなガラの悪い彼もなんだか人生にくたびれた感じ。
なんとか総務部長
疲れた顔して、「いわくら」の営業を門前払い。偉そうに暇人はいいよと話す。
リストラされた派遣社員の小奈美さん。
良郎がリストラされたときは、目も合わせない感じだった。あんたとは違うと言いたいけどバイトしてる自分は外から見ると同じなのかと悔しそうに見えた。自身が好きなことで仕事を始めてイキイキしている。
それが良郎にも好影響を与えて、その後何度か登場する。
野草採集で出会った株主の紳士、釣りを教えてくれた人、釣りを教えた若者、その父、、、、、、、
など様々な人間関係が良郎にはある。
そこに潜む気持ちを読んでいくと痛快である。
良郎のことを軽んじていた人たちは多くが「いわくら」にで活動している彼より、地位だのお金だの世間一般で評価されるものをたっぷり持っている人たちである。
であるのに、みな良郎に一種の憧れのような感情を持って接している。ように見える。
彼も、ざまあみろなんてことは思わない。性格もあるが楽しいこと、自身の生活に満足してる人はそんな、勝ち、負けみたいなことを考えないんだと思う。
第二の人生(採集生活を始めた良郎)で出会った人たちはみないい人で好影響の相互作用が起こっている。
家族の変化も見逃せない。
妻が日を追うごとに、夫を見直しているのが手に取るようにわかるし。
家庭内にいても交流のなかった娘とは頼られるまでになっている。
あの娘が弁当屋に来たときは自分のことのようにめちゃめちゃ嬉しかったです笑。
リストラ→採集生活→弁当屋
っていうストーリーだけでも奇抜で他にはない読み物なのにそれに加えて
この心温まる人間模様
ほんとそこが最高でした。
あと、前の記事の堀江さんの話じゃないけど
やりたいことがあってもできない理由を見つけてやらないって言う経験ありませんか?
例えば、釣りがやりたい!
でも捌けないし、料理法もわかんないからやんない
的な感じです。
でも良郎を見てると、好きなことだから?なのか調べてやります。
やり方を調べるってのはこの時代簡単にできるのに、めんどくさがって自分はやってなかったなっていうのに気付かされました。
何かが好き!とか楽しい!って大事ですね
そういう人ってエネルギーの総量が違う感じがします。
自分を充実させることがよりよい人生つながるんですねーシミジミ
心が温まり、自分自身も活力に満ちる感覚がありました。
良郎の変化に、ワクワク、周囲の変化に、ドキドキ
たまに心温まり、まだただ良郎の今後を見ていたくなる一冊です。
本当に面白かったです!
(仕事中も早く読みたいなーって思ってたぐらいですもん)
物語の中に没入する感覚が久々に味わえました。
山本甲司さんの本、違うのも読んでみようと思います。