たぬきの読書

読んだ本の感想やら

二年半待て 新津きよみ

今回読んだ本はこれです。

 

二年半待て (徳間文庫)

二年半待て (徳間文庫)

 

 僕はこの本のことを全く知りませんでした。本屋などでもみかけたことはなかったし。

メルカリで全然違う本を買ったら、おまけで付いてきましたy(^ー^)y

面白い本なので読んでみてくださいとふせん付きで。

 

買った本を読む前に読みました笑

 

 

この本の面白いところは

人生の各ステージを題材に、そこに潜む悪意、不安、悩みなどの生々しい感情が読者に切に伝わるところだ。しかもその感情が誰にでも起こりうる普遍的なものであるところもまた恐ろしい。

就活から終活まで自分の日常

就活、婚活、恋活、妊活、保活(保育活動)、離活(離婚に向けた活動)、終活

この各ステージを題材にした短編集です。

 

この本を読んで思ったこと

大人になるってめんどくせー

子供のときって目の前のことだけに無邪気に取り組んで楽しかったですよね。

 

大人になるにつれて人間関係、自分の気持ちにしがらみが増えて増えて身動き取れなくなる。自由に生きられるなんてのはなかなか難しくて、こういう現実もあるのかなー

って思いました。

 

この本の短編の多くは家庭環境を軸に話が繰り広げられます。

夫婦の不仲、親子の不仲、不妊に直面する夫婦、兄に依存する妹、介護、孫の世話に疲れてしまった人

 

話の内容は様々でそれぞれ違った色があるのですが根底には家庭問題があります。

 

友達関係なんかではこんなにこじれることってなかなかないと思うんですよ

深い関係になればなるほどしがらみの大きさも大きくなっていくという風に感じました。

親なんてそれの最たるものですよね。

 

この本の中でも親の、家庭の、呪いのようなものに囚われ身動き取れない状態の人がたくさん登場します。

 

親の呪い

 

こういう題材の本って結構ありますよね。

僕が今までで読んだ中で一番好きな本、

角田光代さんの”八日目の蝉”

 

八日目の蝉 (中公文庫)

八日目の蝉 (中公文庫)

 

も見方によってはそういう見方がありますよね。

 

村上春樹さんの”海辺のカフカ

 

海辺のカフカ (上) (新潮文庫)

海辺のカフカ (上) (新潮文庫)

 

もそんな内容があったと思います。

 

他にも親、家庭の影響で・・・っていうのはありがちなテーマであるとは思いますが、

結構ファンタジー色強めっていうか、あまり現実感の強いものは読んできませんでした。

この本ほど生々しく、しかも現実的な内容を表現した本は初めてです。

 

以下ネタばれ

 

 

印象に残っている話は

第五話「ダブルケア」という話です。

この話は一人のおばあさん主観で展開されます。

数年前まで義父、義母のダブル介護をして疲れ果てていた。

それから解放され、楽になったと思ったら

足腰立たなくなり、ボケが始まった母の家へ通い世話をする。

子供の娘(孫)の世話も任される。

子供からも母からも感謝の言葉はなくヅケヅケと物を言われる。

義父、義母の時もそうであった。

夫はどうかといえば、定年退職を間近に控え、妻のことなど気にも留めない様子。

たくさんの人がこのおばあさんに世話になっているのに誰も、感謝をしていない。

それどころかいつもぐちぐち、づけづけと物を言ってくる。

しかし、必要とする人がいて、しかもそれが家族的な関係である。

逃れられずストレスから自身も認知症的な感じになる。

そして今日も今日とて誰かの為に奔走する。

的な話。

 

救いがなさすぎて悲しくなります。

でもこういう関係もありえなくはない。誰にでもありえるっていうのが自分の感情に強くきますよね。

 

 

もう一つ

第四話「遠い心音」

不妊に悩む夫婦の話。

最初の方は二人とも前向きに問題解決を目指していたが

失敗、失敗、失敗、失敗と失敗が続き、徐々に追い込まれていく。

喧嘩も増え、お互いの些細な部分も許せなくなってしまう。

離婚したが、子供に対する渇望を諦めきれない女は

22歳の大学生とセックスし、無事子供を妊娠する。

大学生の母に挨拶に行く。手紙で自分の思いの丈、本心を伝える。

大学生の母は驚くも、自身も20歳で出産していることから

血筋か、と苦い気持ちにはなりながらも認めた。

自身も一人目は難なく妊娠したが、二人目はなかなかできず悩んだ過去があった。

男の子と女の子が欲しい。二人とも古風な名前にすると決めていた。

その二人目の妊娠がつい最近分かったところであった。(齢40代)

女は、出産を間近に控えていたが、子供様態が悪くなり流産してしまう。

妊娠への執着からか、大学生の母の妊娠に気づいていた女は

大学生の母にあるお願いをする。

 

場面転換。

大学生の母は公園のベンチに座っている。

そこに息子夫婦がくる。女はベビーカーを引いている。

赤ちゃんの名前は心華。

最近話題のキラキラネームだ。

大学生の母は渋い顔をして終幕。

 

 

女のお願いってのは名前を私につけさせてってことだったんですかね

そして気持ちが入っちゃって世話もしちゃってる

母はなんだかなあという気持ちでいる。

 

 

悩みに悩んだ人の行き着く狂気ですよね。

普通の人の考えだとこんな狂ったお願いもしないだろうし

何も悪いことしてないのにこんなことあっていいのかなんて思ってしまいますね。

この話も可哀そうです。

 

 

 

 

こんな感じで、まだまだ印象に残る話はたくさんあるのですが、

長くなってしまったのでこの辺で。

 

話のどれも、夫婦関係、嫁姑関係、身内のしがらみが大きな根底にあって

その多くの問題は誰にでも起こりうる身近なものに感じられました。

自分はまだまだ若造なので、大人ってこんなに形式に囚われ気を遣って動かなきゃダメなんてことはわからないけど、近い将来こういう悩みもあるのかな、

なんて思いました。

 

日常に潜む残酷な大人の世界を体験したい人は是非!

 

※最近実家に帰ったら、親戚が急にくるという連絡があり、急いで菓子折りを買いに行ったり、ぽち袋にお金を入れたりと忙しない両親。「突然来られると困るんだよねー」と話していた。向こうからすれば「寄って行ってみるか―」という思いつきだったかもしれないが、こうなるとは、、、大人って大変

この体験を思い出しました